32



終わった。

文化祭、昼の部が終わった。

保健室の休憩所は、かなり手を込んだだけあって、ずっとお客さんが途切れなかった。

中には大輔くん目当ての子もいたけど。

澄春くんも格好良いから案の定、噂になって。

盛り上がってたな。

残すは後夜祭の『恋人迷路』だけ。

なんと、この迷路、学校全体を使って行われるんだって。

もう日はほぼ落ちて、暗くなっている。

「それでは、いまからお待ちかねの、後夜祭、『恋人迷路』を始めます。」

アナウンスがかかった。

「スタートは、職員室からです。」

そう放送されて、職員室は、大賑わいになった。

もともと大きな職員室だったから良かったけど、職員室が行列なんて……、なかなかの光景……。

私も澄春くんと一緒に向かった。

保健室と職員室が近く、早めに並ぶことができたため、直ぐにスタートすることができた。

係員に誘導されて、スタート地点につく。

「では、お2人が結ばれることを願って〜、スタート〜!」

澄春くんと歩き出す。

雰囲気を作るためだろうか……?

結構薄暗い。

「ゴール、何処にあるか分かる?」

私は澄春くんに聞いた。

「分かんないけど、ほら、あそこにチェックポイントがあるでしょ?」

澄春くんの指さす方を見ると、係委員が座っている椅子を見つけた。

机も置かれている。

「あそこでミッションをして、ゴールまでの手掛かりをゲットすればいいんだと思う。」

なるほど。

まだスタートして間もないのに、そんなことまで予想して、分かってしまう澄春くん。

やっぱり凄い。

「取り敢えず、第1チェックポイントへ行こう。」

「うん。」

距離もあまり無さそうで、実際ほぼ無かった。

第1チェックポイントには直ぐに到着した。

「はい、第1チェックポイントで〜す。ここでは簡単なミッションがあります。」

何だろう……?

ドキドキする……。

「今ここで、10秒間、見つめあってください。スタート!」

え、え?

見つめ合う!?

10秒も……!?

澄春くんを見ると、澄春くんは真剣な顔で、私を見つめていた。

ドクドクドクドクッ

鼓動が早くなる。

「1、2、3、4、5、6、7、8、9、10!はいOK!」

2人とも、慌てて目を逸らす。

わあああああ……、絶対、今顔が赤くなってるに違いない……。

恥ずかしい!!
「それでは、次のミッションも頑張ってください!」

そう言われて、私達はまた歩き出す。

それにしても、無言……。

い、今の……、恥ずかしすぎだから、何か気まづい……。

そして、この雰囲気のまま、第2チェックポイントに到着した。

「こちらは第2チェックポイントです!ここからは、手を繋いで迷路をクリアしてください!それがミッションです!」

えええええ……!

そ、そんな……!

て、手なんて、繋いだこと……、無……い……。

「日奈子ちゃん。」

戸惑う私をよそに、澄春くんは手を差し出してくれた。

私は、おどおどしながら、その手を握った。

触れた部分が熱い……。

澄春くんに伝わってしまいそうで……。

「はい!では次のミッションも頑張ってください!」

私達は、その場を去る。

な、なんか……、ド、ドキドキする……。

やっぱり、私、澄春くんのこと……!?