「日奈子、好きだよ。」

ずっと夢見ていた。

いつか、王子様が現れて、私を幸せにしてくれるって。

「……私もっ!」

その夢は、中学2年生の夏に叶った。
あんまり早く叶いすぎて、ニヤけてしまう。

「照れてる日奈子も可愛い……。」

と、照れながら言う、彼。名前は……、明人くん。

「もうっ……!」

明人くんは、格好良くて、優しくて、何をやっても、平均は軽く超えるような、私の理想の王子様。自慢の彼氏なんだ。

どうして私なんかと付き合ってくれたのだろう?不思議なくらい完璧なんだ。

「日奈子ちゃんと明人くんだ〜!お似合い〜!」

そんな声がちらほら聞こえてきて、その度に優越感を感じる。

私の幸せが証明されているようで嬉しい。

神様に、何度もお礼を言った。

「日奈子!帰るぞ!!」

明人くんと話していると、後ろから、幼馴染みの健吾が、そう言った。

「健吾、ごめん。今日は、明人くんと帰るから。」

明人くんと付き合うまでは、ずっと健吾と帰っていたから、健吾には悪いけど、仕方ないことだよね。

「あ?」

何だろう……?健吾、不機嫌そうだな。

「ちっ。またかよ。こんな男の何処が良いっていうんだよ。」

「ちょっと!明人くんのこと悪く言わないで。」

明人くんは、私の王子様なんだから!

「良いんだよ、日奈子ちゃん。ありがとね。」

ニッコリと微笑む明人くん。

あ〜、やっぱり王子様だ〜。私には、もう白馬が見えるよ。

「もういい。帰る。」

そう言って、健吾は教室を出た。
「あ、ちょっと健吾、何怒って……、」

言い終わる前に、健吾は私たちの前から姿を消した。

「健吾くん、なんか可哀想〜。」

そんな声も、聞こえてきた。