手紙が出されたのは、苺が殺される前日だった。
手紙を読み終えた二人は息をのんだ。
苺が殺されることを予知していたからだ。
「……どうして私が花村桃だってわかったんですか?」
栞はさまざまな疑問が頭の中をめぐっていたが、どうにか一つに絞り、聞いた。
すると奈緒は窓辺に行き、懐かしむように話し始めた。
「苺ちゃんに聞いてたの。あの子、なかなか自分のこと話そうとしなかったんだけど、一度だけあったの」
栞と沙也加は、黙って奈緒の話に集中する。
「苺ちゃんがここに来て一年くらい経ったころだったと思う。その日がご両親の命日だって後から知ったんだけど、明らかに元気がなくって学園みんなが心配したの」
苺が一人ではなかったことを嬉しく思う反面、苺が時が経っても家族を大切に思っていたことを知り、悲しくなる。
自分が、記憶喪失になっていなければ。
どう後悔しても意味はないのに、そう思わずにはいられなかった。



