栞は事務室ではなく、学園長室に通された。
栞がソファに座り、出されたお茶を飲んでいると、奈緒が古い一冊のノートを持ってきた。
「えっと、これは……?」
不安げな顔を見せる栞に対し、奈緒は微笑む。
「それを読めば、とりあえずのことはわかると思います」
奈緒そのまま部屋を後にした。
一人になった栞は、ゆっくりと渡されたノートを開く。
書かれていたのは苺について。
ここは昔、苺が預けられていた学園でもあったのだ。
花村苺
来た日 平成十年八月九日(十四歳)
出た日 平成十五年三月二十日(十八歳)
理由 両親が殺害されたから。(妹は記憶を失い、刑事の家)
性格 明るくて気の利く女の子。面倒見がよく、争いごとが嫌い。直感力が優れている。
次のページからは、苺の行動が事細かに記録されていた。
いつ苺が体調を崩したのか、どんな悩みを持っていたのかなど、細かいことまで書かれている。
少しずつ姉のことがわかっていくことが嬉しく、栞は頬が緩んだ。



