栞がそう言うと、聖は涙を流しながらも、笑顔を見せた。
聖と別れ、二人は苺の娘、沙羅のもとに向かった。
「まさか栞ちゃんがあんなこと言えるようになってるとはね」
「姉のことを思い出したからこそ、言えたんです。姉ならきっとそう思ってるだろうって。それより、姉の娘のところなんかに行ってどうするんですか?」
栞は運転しながら尋ねた。
沙也加は聖にもらったノートを見る。
「生まれて二か月で施設に預けられてるんだし、お母さんのこと教えて、なんて言ってもわかるわけないもんね。でも、私たちが聞き込みするのは娘本人じゃない。職員のほうだよ」
ノートを閉じたと同時に、沙也加の目の色が変わった。
「沙羅ちゃんが施設に預けられて十年。十年以上あそこに勤めてる人がいてもおかしくない。だからその人に寺崎苺について聞く」
沙也加の方法に、栞は納得と同時に驚いた。
自分では思いつかなかったことだからだ。
「それで情報が得られなかったらもう八方塞がり。私たちには手の付けようがない事件になる。つまり、迷宮入りだね」
「それだけはさせない」
まっすぐ前を見つめる栞を見て、沙也加は嬉しそうにつぶやいた。
「同感」



