栞のその言葉が響いたのか、彼は机にゲーム機を置き、栞に向き合った。



「なにが知りたいの?」



栞が聞こうとすると、それよりも早く、沙也加が聞き始めた。



「君、ここの大家なの? 中学生くらいに見えるけど……」


「臨時だ。俺は時澤聖。実際経営してんのは俺の親なんだけど、あいつら仕事ほったらかして旅行に行きやがった。これが証拠」



聖はそう言って紙切れを渡した。


そこには次のように書いてあった。



『聖へ

お母さんたちは旅行に行きます。その間、大家の代わり、よろしくね。絶対に逃げちゃだめだよ。ちなみに、帰るのは三カ月後くらいかな。

追伸 寺崎さんちの旦那さんには気を付けてね。彼、手が早いから。 母』


「どうしてしわくちゃなの?」



手紙を読み終えた栞が聞いた。



「読んですぐ丸めたから。ありえねーだろ。息子に仕事押し付けるとか」



聖は改めて思い出し、怒っている。



「じゃあ寺崎苺についてはそんなに詳しくないってこと?」