疑問を抱いたそばから、律が質問する。
「はい。名前とか誕生日とかしかありませんでした。まあ生きてるのは確かなんですけど」
「それ……気になるね」
宙が掘り下げようとするが、遥が無言でいながら、それを止めた。
栞は話を再開する。
「夫は寺崎大地、そして姫野学園に娘がいます。娘は生まれてから約二か月後に預けてます。主婦をやりながら、夫のスケジュールも管理してたみたいです」
全員、人の話を真剣に聞き、黙って考え込んでいる。
「岸本梨央、十六歳、高校二年生。両親は健在。それと二年前、岸本の兄、拓斗が交通事故で死んでる。死因は出血多量だが、血液から薬物を使用していたことがわかった」
また薬物という言葉が出て、三人は引っかかった。
「兄とは仲が良かったらしく、彼が死んでから一か月は部屋に引きこもったままだったらしい。で、親から高校は行けって言われて、上京してきた。高校生になって一人暮らしを始めている」
遥がソファに座ると、沈黙の時が流れた。
「さすがの八課もお手上げか」
難しい顔をして下を向いていた全員の顔が、声のするほうを向く。
そこには隼人が立っている。



