翌朝、栞は今までより一時間ほど早く家を出た。



七時半ごろに警察署に着き、自分の部署に向かう。



廊下の突き当りで目にしたものは、大量に積み重ねられた段ボール。


栞は一瞬目を疑ったが、何事もなかったかのように部屋に入った。



「おはようございます。一か月、迷惑かけてすみませんでした……って、あれ、真瀬さん一人?」



栞が声をかけると、資料に埋もれていた遥が顔を上げた。


目の下にはくっきりとクマができている。



「ああ、別に迷惑だなんて思ってないから気にするな」



そう言ってまた手元の資料に目を戻す。



いつもの無口な遥ではない。



この一言を聞いてそう感じた。


遥が本気になるほどだ。


今回の事件は相当難解……というより、面白いのだろう。



栞は自分のデスクに荷物を置く。



「そういえば、廊下に大量の段ボールがありましたけど、あれってなんですか?」


「あれはいらない資料だ。昨日一課が大量に資料を持ってきたんだが、あれだけいらなかった」