「聞いてたわけねーだろ。栞がお前にそんなことされていたのに、気付くとでも思ってんのか」
玲斗は息をのんだ。
──騙された。この俺が。
「お前、なかなかいい目してるな。まあ悔しいだろが、覚えとけ。八課は一課よりも優秀な人間しかいない。騙されて悔しいなら栞を上回る成績を残せ」
隼人はそう言って、八課に向かった。
玲斗はその場に膝をついた。
ドアノブに手をかけようとしたとき、栞の叫び声が聞こえた。
「玲斗が私を騙してるわけないじゃないですか!」
隼人は後ろめたさがありながら、部屋に入った。
「おいおい、どうした。廊下まで聞こえてたぞ」
栞が立ち上がって、三人に怒鳴っていたらしい。
栞は隼人が入ってきたドアが閉まりきる前に、部屋を出て行った。
「なにがあった」
「それは愚問でしょ」
宙が苦笑いしながら言う。



