眠らせ森の恋

「あんたみたいなのに、いい男全部かっさらわれたら嫌だから」

 私の今までの人生、全部否定される気がするからと言ってくる。

「なんでですか?」

「だって、あんたと私って、正反対じゃないの」

「正反対のものって惹かれ合うって言いますけどね」
とオリーブオイルに浸したパンを食べようとしたが、あっ、と取られる。

「そんなの男と女だけの話よ。
 私は、あんた見てたらムカつく。

 のらりくらりと生きてるくせに、みんなにちやほやされちゃってさ」

「すみません……。

 私、社長にも西和田さんにもいつもこっぴどくやられてると思うんですが」

 あと、英里さんとか、と思いながら、
「誰が私にちやほやしてくれてるんですか」

と訊いてみたのだが、英里は、今取ったパンを、ぽいと口に放って食べたあとで、
「さ、行くわよ」
と立ち上がる。