眠らせ森の恋

 社内の噂話は、ほとんど男の人の話で、その流れで、コンパの話になった。

「コンパでさー、秘書って言うと、へーって目で見られるけど」

 でも、偏見もある、と英里は言う。

「誰かの愛人なんじゃないかとか」

 ぎくりとしたが、よく考えたら、愛人ではなく、正妻候補だった。

 ただ、なんとなく疾やましいのは、そこに愛情が介在していないと知っているからだろうか。

「社長の愛人ならいいですよねー」
と笑う正美に、英里は渋い顔だ。

 どうもそういうのは好きでないらしい。

 意外な潔癖性だ。

「まあ、コンパでいい人居ないけどね」
と呟いたあとで、英里は、こちらを見、

「あんたはコンパには呼ばないわ」
と言ってきた。