眠らせ森の恋

「今は山にこもって、立派な陶芸家になっている」

 そ、そうなのですか。

「俺が後を継げそうになかったのに、白河さんが押してくださって、今の地位に居る。うちの一族に顔が利くからな」

 本当に感謝してるんだ、と奏汰は言った。

「俺のために俺が社長で居たかったというより、父親が気にするから、そうしたかっただけなんだが」

「……いいお話ですね」
と言いながら、だからって、それで私が襲われるというのもおかしな話ですが、と思って聞いていた。

「でも、結婚前にそういうの、白河さんのようなご年配の方はお嫌なんじゃないですか?」
と言うと、

「大丈夫だ。
 どうせお前はすぐにはさせないだろう。

 少しずつ、慣らしていこう」
と大真面目に言われる。

 なにか手を繋いで、プールで子どもを水に慣らす親みたいだな、と思いながら聞いていた。