眠らせ森の恋

「何故ですか」

「何故ですかって、お前の夫になるからだ」

「まだなってませんし、私、初めてなのでやめてください」

「じゃあ、一生そのままで居るつもりか」
と何故か社内で訓示をたれているときのような、立派なご高説が始まる。

 単に手篭めにしたい、という話のようだが。

 言葉を変えて言ってみるもんだな、と感心して聞いていた。

「あのーでも、社長は私には興味感心がないように感じるのですが。
 何故、襲おうとなさるのですか?」

「白河さんに子どもを見せるためだ」

 いや、ちょっと待て、と思う。

「俺は、本当に白河さんにはお世話になったんだ。

 うちの父親が周りの人間が信用できなくなって、世捨て人みたいになったとき、白河さんが別荘に匿かくまってくださって、本当にお世話になった」

「社長のお父様って、前社長ですよね?」