ちょうど母親が冷蔵庫に詰めておいてくれた食材の中に、材料があったのだ。

 チーズを餃子の皮で巻いて揚げたやつだ。

 何処がとっておきだと突っ込まれそうな簡単さだが、それを見た奏汰は、ほう、と言う。

「料理ができたのか」

 いや、何処で感心してくれてんですか……と思う。

 だが、奏汰が、
「じゃあ、酒は俺が用意してやろう」
と立ち上がってくれた。

 意外にマメだな、と思う。

 社長なんだから、ふんぞり返ってなにもしないのかと思っていた。

 うちの父親など、自分が気の向いたとき、それ、何処の国の料理ですか、というようなのを作る以外、なにもしないのだが、と思いながら、流しとカウンターが一緒になっているキッチンに立つ奏汰を見ていた。

「どうせ、お前、酒も作れないんだろう」
 そう奏汰は言ってくる。