「あ、あのー」
とつぐみは勇気を出して話しかけてみた。

「今日は、何処かお出かけになったりはしないんですか?」

 すると、なにを考えているのか、ただつぐみの淹れたお茶を見ていた奏汰は目を上げ、
「それは暗に俺に出かけろ、と言っているのか」
と訊いてくる。

「いやあ、間が持てないので」
とうっかり、ぺらりと白状してしまった。

 これからしばらく此処に居るというのに、我慢して合わせ続けることも難しいと思っていたからだ。

 しばらく此処にって、いつまでなんだろうな、と思い、ちょっとゾッとした。

 奏汰は白河に会うまでに他人行儀なところをなくしたい、と言っていたが。

 他人行儀でなくなれば、いつでも出て行っていいということだろうか。

 いや、この社長相手に、フランクに接するとか。

 永遠に無理な気がするんだが、と再び、無言になった奏汰を上目遣いに窺い、思う。