その間に、奏汰はもうさっさとキッチンに行ってしまっていた。

 奏汰は深煎りの豆で珈琲を淹れ始める。

 あ、いい香りです、と思いながら、カウンターまで行って、覗き込むと、奏汰は生クリームを軽く泡立て始めた。

 しかし、かなりゆるい感じに泡立てている。

 生クリーム?

 ウィンナコーヒーでしょうか?
と思っていると、奏汰は、角砂糖とアイリッシュウイスキーを出してきた。

「えっ? お酒じゃないですか」
と言ったが、

「いや、そんなにアルコール度数は高くない。
 高くも出来るが、そそぐウイスキー次第だな」
と奏汰は言う。

 そうなのですか、と思いながら眺めていると、奏汰は手のひらサイズの小鍋にウイスキーとオレンジの皮を少し入れ、火にかけた。

 IHなので、マッチで火をつけ、青白い炎を立ち昇らせる。

 香りも一緒に立ち昇る感じだ。