「貴方が王子様じゃなくても――。

 ただ巻き添えで眠らされただけのその辺の従者でも。

 私は妖精に頼みに行って、一緒に眠らせてもらいます」

 貴方が目覚めるまで―― とつぐみは言った。

 なし崩し的に始まった同居生活かもしれないが、今は奏汰の居ない毎日なんて、もう考えられなくなっているから。

「つぐみ……」
と微笑む奏汰を見つめ、大きく息を吸う。

 思わず、
「……い、行きますっ」
と言って、

「行きますはいらんっ」
と目を閉じた奏汰に言われたが。

 少し笑ったつぐみは、奏汰の唇に、ほんの少しだけ、触れてみた。

 奏汰がつぐみの小さな後ろ頭に手をやり、そのまま長く口づけてくる。

 目を閉じたつぐみの鼻先で、いつか間近に嗅いだ奏汰のボディソープの香りがしていた。

 今は自分も使っているその華やかな薔薇の香りが、花咲き乱れる眠りの森を思わせた
――。





        
                                     完