「結婚していいことあったか?」
と問われ、いや、まだ結婚はしてないんですけど、と往生際悪く言いながらも、

「そ、そうですね。
 あるような気もしますよ」
と答える。

 西和田が自分たちのせいで、結婚に幻滅しては悪いと思ったからだ。

「えーと。
 帰り時間を気にせずに、一緒にお酒呑んだりとか出来るし。

 一緒に料理作ったり。
 寝ちゃったら、お姫様抱っこで運んでくれたり」

「お前、社長になにもさせないくせに、お姫様抱っこで運ばせてるのか?」

 やっぱ、やだ、結婚、と一生懸命考えたのに言われてしまう。

「えーっ。
 きっといいですよ、結婚。

 うちは駄目でも」
と根拠のないことを言いながら、つぐみは先を行く西和田を追いかけた。