「あら、ごめんなさい」
と絵に描いたような美人秘書の先輩、田宮英里(たみや　えり)に言われた。

　彼女が手にしていた硬い大きなファイルの角が当たったようだった。

　そこ、金属がはまってますが、と思いながら見ていると、
「ごめんなさい、私も粗忽者で」
と笑っている。

　話を聞いていたようだ。

　はあ、いえ、と頭をさすりながら答えている間に行ってしまった。

　やれやれ、という顔をした西和田が、
「わかりやすいな、田宮は」
　まだまだだな、と言ってきた。

「気をつけろよ、秋名」
と言われる。

　なにをだろうかな、と思っている間に、西和田は席を立った。

　私も仕事しなくちゃな、ととりあえず唯一、褒められる書類作成に戻ることにした。