眠らせ森の恋

 



 もう七時だが、一階は、しんとしていた。

 いつもなら、早くに起きて、朝食の支度をしているつぐみの気配がするのだが、それがない。

 奏汰は螺旋階段から下のフロアを眺めていたが、そのまま二階の廊下を歩き、つぐみの部屋の扉をノックした。

「つぐみ?」

 そう呼びかけてみるが、返事がない。

 ……まだ寝てんのか。

 遅刻するぞ。

 そうだ。
 遅刻するぞ。

 これは起こしてやらなねば、まずいだろう。

 この状態で放置するのは、同居人として問題あるからな、と自分に弁明しながら、奏汰はつぐみの部屋の扉を開ける。

 知らない間に母親がそろえたというわりには、可愛らしい家具の詰まった部屋の中を見回すと、案の定、つぐみはまだ爆睡していた。