眠らせ森の恋

 



 一方、つぐみは、家計を預かるのって、ドキドキするなー、と思いながら、ノートパソコンで家計簿をつけていた。

 結婚しているわけでもないのに、此処へ越して来た日、奏汰は、ほら、と通帳を渡してきた。

『今月分とか特に渡さないから、それで好きにやれ』

 ……いいのだろうか、と思いながら、そっと通帳を開けると随分たくさんゼロが並んでいた。

 これ、生活費か?
 二、三十年はもう生活費、貰わなくていいような、と思う。

 でも、贅沢はいけません、贅沢は、と両親に教え込まれたことを守り、つぐみはちょこちょこ家計簿をつけてみていた。

 ダイニングのテーブルでせっせと打ち込んでいると、いきなり後ろでいい香りがした。

 風呂から出て来た奏汰が真後ろに立っているようだ。薔薇のようなボディソープのいい香りに思わず、動揺する。

「ああっ、打ち間違えたっ」
と叫び、

「なに動揺してんだ。粉飾決算か」
と言われてしまった。