ほう、と言うと、
「どうぞ、よく酒の回る風呂でたっぷり呑むと、きっと気持ちがいいですよ」
と言い出す。

 やはり、殺そうとしているのかと思ったら、
「死んだように眠れると思います」
と言う。

 こいつ、やっぱり、俺に襲われたくないんだな、と思った。

 ちょっと傷つくぞ。
 今までの人生でこんなことはなかったのに。

 箱入りにも程がある、と思った。

「割り箸をワインに入れておいてもいいらしいですよ。
 木の香りがついていいらしいです」

 いろいろ考えるもんだな。
 俺を眠らせようと思って……。

 そういえば、ちゃんと大きいグラスに少しだけそそいである。

 デキャンタージュしないまでも、ワインを空気に触れさせ、安酒なりに香りが開くようにしてあった。