その二つの悲しみが、一気に溢れ出した。



「あ、れ……」



すると、涙腺のコントロールができなくなった。


止めようと思っても、逆に流れるばかり。



それに気付いた香苗が、慌てて心配してくれる。



「綾乃?どうした?」



教室にいる生徒に気付かれないよう、教室の端に連れていかれる。


そして、優しく聞いてくれた。



「あたし……大川に、告白できない……」



泣いてるせいで、言葉が途切れ途切れになってしまう。



香苗はいつもあたしの恋バナを、親身に聞いてくれてた。


だから、余計にもうしわけなさでいっぱいになった。



「綾乃が謝ることないよ。なんで大川に言えないの?」


「大川、好きな人が、いて……今日、その子の誕生日なの……だから、大川は、今日告白するって……」



次第に日本語もおかしくなっているような気がする。



「そっか……辛かったね」



香苗はそれだけ言って、優しく抱きしめてくれた。


それが嬉しくて、あたしはさらに泣いてしまった。