「美妃を解雇した日、あのとき、何の根拠もないのに自信に満ちあふれた君を見て、決めていたんだ」

「何の根拠も......って、失礼ね」

「この人なら何があっても笑い飛ばしてくれそうだと。
どんなことがあっても気丈に生きていけそうだと思ったんだ」


一瞬嫌味を言われてるのか、ほめられてるのか分からなかったけど、その言葉を聞いて胸がいっぱいになる。私の方はただの嫌味な男だとしか思ってなかったのに、まさか秋人はそんなことを思っていてくれたなんて......。

一人で感慨に浸っていると、秋人はすっと膝をついて、私の手を取る。


「御曹司でなくなったとしても俺を支えると言ってくれた美妃と、一緒に生きていきたい。
これからは、君が望むことは全て叶えよう。君のために生きると誓う。だから、どうか俺と結婚してほしい」


ああ、もうどうしてこんなにも、秋人は私のことをよく分かっているの。

私の前にかしづき、うやうやしく手を取った秋人をそっと見下ろす。


貧乏は大嫌いだけど、御曹司でなくなったとしても秋人のことは愛してる。

だけど、その愛してる人が、金持ちで地位もある人間だったら、なおいい。

ベタベタに私をお姫様扱いして、それから、鳥肌が立つくらいにキザでロマンチックなプロポーズがあったらもっといい。