「重大なミスをして、会社に損害を与えてしまった」


秋人からプロポーズをされて数日も経たないうちに、明け方に帰ってきた秋人はいつもと変わらない様子でそう打ち明けた。いつもと変わらない冷静な口調だけど、その表情はどことなく疲れてるように見える。


「......会社が傾くほどではないんでしょ?」

「そこまでではないが、取引先の信頼を失ってしまったかもしれない」
 

それは、ほんの些細な見積もりのミスだったらしいのだけど、そのちょっとしたミスが今回は命取りになったらしい。一時的に秋人と同じ会社に勤めてたとはいえ、正直どんな業務内容だったのかさえ忘れてしまったから、聞いても全然ピンとこないけど。


「大したことはないから、君は気にしなくていい。
一応婚約者の君には伝えておくべきだと思ったから、報告までだ」

 
秋人はため息をつくと、すぐにシャワーを浴びに行ってしまった。

気にしなくていいって言うなら、気にしないけど、でも仕事の愚痴なんて一回も言ったことがない秋人がめずらしい。よっぽどのことだったのかしら......?

それが少し引っかかったけど、本人が気にしなくていいと言っているのだから、その時点では深く追及しないことにした。