一途な小説家の初恋独占契約

「そうか。知らないはずないよね」
「ごめんなさい。ジョーを責めているわけじゃないの」
「大方、僕を言いくるめて、契約を取ってくるように言われたんだろ。それで、こんなに親切にしてくれたのか」
「そんな……そうじゃない!」
「そうじゃないとおかしいだろ。いきなりやって来た僕を、一人暮らしの家に泊めてくれるなんて……やっぱりおかしかったんだ」
「ジョー、違うの」
「……今日は、もう寝るよ。大塚出版の企画書は、見たければ見ればいい」

ジョーは聞く耳を持たず、資料をダイニングテーブルに置くと、一人で2階へ上がっていった。

大きな背中が拒絶をはっきりと表していて、階段の下まで追いかけたものの、それを上ることはできなかった。

悄然としたままダイニングに戻った私は、資料には触れず、お風呂に入り、身支度をすっかり済ませた後、近くのソファに座った。

携帯電話には、会社から連絡がたくさん入っていた。
ジョーに関わる多くの人が、遅くまで仕事をしていたのだろう。

その中には、編集部の寺下部長から、契約についてジョーの感触はどうか、他社からの接触はなかったかと尋ねるものもあった。

もう夜中と呼べる時間にためらいつつ、大塚出版の鎌石さんと話したことをメールで伝える。

すぐに返信があった。

『内容は?』

何度も携帯の待ち受けを暗転させたり、メールを開いたり閉じたりを繰り返してから、腰を上げる。

テーブル上の資料は、何時間も前にジョーが置いたままだ。

ジョーは、部屋から出てきていないようだ。

ギュッと目を瞑って考える。

何度も躊躇してから、私はその資料を開いた。

写真集の企画だった。
ジョーなら、書き下ろしの文章がなくても、写真だけで売れるだろうということが1枚目にはキャッチーに、2枚目には理路整然と提案されていた。

これを見て、ジョーは、どう思ったのだろう……。

私はその資料を写真に撮り、寺下部長に送った。