一途な小説家の初恋独占契約

ジョーが場慣れしているようなので、私はインタビューの場にいることは、ほとんどなかった。
DVDの会社の人が大方のことはやってくれているとはいえ、私も忙しかったのだ。

編集部と連絡を取り合いながら、マスコミの人と名刺交換をし、お待たせしていることを詫び、書籍の情報も流して欲しいと依頼をする。
書籍やDVDの物撮りという、物品だけの撮影を別部屋で案内することもした。

「あぁ、かっこよかった! 作品を読み終わった後より、ファンになった!」
「あそこまで男前だと、カメラの向けがいがありますよ。作家にしておくのは、もったいないなぁ。モデルとか、やらないのかなぁ」

取材を終えて、満足そうな人たちが部屋を出て行く。

「ありがとうございました。お疲れさまでした」

それを見送った後、次の取材陣には待ってもらい、部屋の中を覗く。

ジョーはというと、急遽残ってもらったヘアメイクさんに髪を整えられながら、次の取材の説明を受けているところだった。
ホテルの人が新しいコーヒーを運び、スタッフの人がそれをジョーの元に運ぶ。

部屋中……廊下や待合室で待っている人も含め、その場にいるすべての人が、ジョーのために動いていた。

「こうして見ると、作家の『先生』だって分かるな」

ふいに声を掛けてきたのは、直島さんだった。

直島さんも、編集部と密に連絡を取り合いながら、取材のあれこれをアレンジしていて、携帯電話を手放せずにいる。

この場で、ジョーと私が、プライベートでも知人だと知っているのは、直島さんだけだった。

「大したもんだよ。口うるさい芸能リポーターも、人気ナンバーワンの女子アナも、あいつの手のひらの上だ」

それは、取材を終えた人たちの口ぶりや顔を見れば、言うまでもなかった。
誰もが一様に、熱を出したように顔を赤らめ、目を潤ませて興奮していた。
誰もがジョーのファンになって、気分良く帰っていった。

「俺たちは、先生に気持ちよくアメリカに帰っていただくだけだな」

ジョーはスターで、私はスタッフの一人に過ぎないという、当たり前のことを改めて痛感させられた。