一途な小説家の初恋独占契約

来日前は取材に消極的だったジョーが、乗り気になるなら、清谷書房としては万々歳だ。
ジョーの人気が高まれば、本も売れるのは必至。

ジョーの視線が、私に向く。

「昨日も申し上げた通り、先生が男性だったことを含め、外見が話題になるのは、初めは仕方ないと思います。
でも、それにつられてだとしても、先生のインタビューを見て、改めて作品に関心を持ってくれる人も、必ずいるはずです。先生の言葉で作品を語っていただくというのは、意味のあることだと思います。
もちろん、先生がお嫌でなければ、ですが。作家の先生によっては、サイン会もインタビューも全くお受けにならない方もいらっしゃいますし、お顔を出さない方もいらっしゃいますから」
「……別に嫌なわけじゃないんだよ」

ジョーはそう言うと、私に渡したタイを戻すよう言った。

太い指が窮屈そうにシャツのボタンを留めていく。

「今日から3日間で受けられる分の取材は、受ける。アレンジは、任せてもいいかな」
「はい!」

その場に居合わせたスタッフで、慌しく打ち合わせをする。
ホテルの空き部屋を急いで押さえ、すぐに受けられるものは、その場で受けることにした。
主役の二人も、別部屋で取材を受けているらしい。

幸い、イベントで使った備品などもあったので、体裁は何とか整えられた。
もちろん、ジョーの書籍も飾り付ける。

清谷書房の編集部に入っていた問合せと、DVD販売会社宛の取材依頼とを合わせ、段取りを組んでいく。

テレビや新聞、雑誌、インターネットなど、各メディアからくまなく関心が集まっている。
その場で受けられるものや、取材意図が確かなものだけに厳選したものの、日程は瞬く間に埋まってしまった。

ジョーは、急遽始まったとは思えないほど落ち着いており、ホテルのソファにゆったりと腰掛け、穏やかに取材に応じていた。
相手がベテランの文芸記者でも、華やかなだけが取り得の若いレポーターでも、態度が変わることはなかった。