一途な小説家の初恋独占契約

まずは、ジョーの意向を聞かないことにはということで、控え室に入る。
ジョーは、ジャケットを脱ぎ、タイを外そうとしているところだった。

「ラザフォード先生、お疲れさまでした。イベント初出演とは思えない堂々としたお姿で、記者たちも感じ入っていましたよ」
「ありがとう」

硬い表情で頷いたジョーは、私に訴えるような視線を向けた。

「お疲れさまでした。主役の二人を引き立てつつ、記者の質問にも的確に答えていらしゃって、素晴らしかったと思います」
「本当?」
「ええ、本当です」
「……それなら、良かった」

あからさまに安堵して、ジョーはソファに座った。

他の人も座るよう促しつつ、私だけは手招きする。

ジョーの手が、私に触れようとするのを察して、あえてジョーの手に持ったタイだけ受け取り、ジャケットと一緒にそれを片づける。

この場にいるのは、二人だけではない。
親しい知人だというのは知られているかもしれないけれど、誤解を招くような接触は避けるべきだった。
ジョーにこんなにも多くの注目が集まっているなら、なおさらだ。

「それで、先生。今日のイベントを受けて、先生の取材をしたいという記者が大挙していまして。せっかくの機会ですので、いくつかはお受けになることをお薦めしますが……」
「僕が取材に応じたところで、DVDは売れないんじゃない?」
「いえ、そんなことは! 先生がお出になれば、DVDも話題になるのは必然ですので」
「そう」

ジョーは、自分のタブレットを開き、思案している。

ジョーの予定は、それほどないはずだった。
サイン会が2回と、元々決まっていた取材がほんの少しだけ。
時間的には、それほど取られない。

「汐璃は……清谷書房は、どう思う? 本の宣伝になるのかな?」
「それはもう!」

直島さんが勢い込む。