一途な小説家の初恋独占契約

打ちひしがれた気分のうちに、イベントが終わる。
ジョーは、最後まで凛とした姿勢を崩さなかった。
完全に、スクリーンの内側にいる人だった。

スタッフに誘導されてステージ裏へ戻ろうとするジョーの姿を目で追っていると、真っ直ぐ前を見ていたはずのジョーの視線が、チラッとこちらを向いた気がした。

追いかけていこうとする記者たちを振り切るよう、スタッフがジョーを急がせる。

「……行かなくちゃ」

ジョーが、呼んでる。

なぜだかそう思って、私は控え室に飛んで行った。

部屋のある通路まで戻ると、イベント前より更に多くの人でごった返していた。

「すみません……通してください……」

満員電車の中を突き進むように人をすり抜け、何とかジョーの控え室の前まで戻る。

「ああ、清谷書房さん、ちょうど良かった」
「はい?」

話しかけてきたのは、DVD発売会社のスタッフの人だった。

「ジョー先生への取材依頼が殺到してるんですよ。そちらにも来てるんじゃないですか? どのように調整しましょうか」
「あ……」

たくさんの人たちは、ジョーへ取材を申し込みたい人たちらしい。

ジョーのマネージャーやエージェントがいれば、その人たちが仕切るところだろうけれど、ジョーはそういった人たちを日本に連れてきてはいなかった。

元々清谷書房を通じて、ジョーに取材を依頼していたのは、文芸系の雑誌くらいで、その数も多くなかった。
大事にしたくないというジョーの意向もあり、来日すること自体、広まっていなかったのだ。

それが、昨日の写真流出と今日のイベントで、一気に問合せが来た。
テレビや新聞、一般の雑誌やインターネットサイトなどからも問合せがあると言う。

どうしたらいいのか分からず戸惑っていると、直島さんがやって来た。
既に、マスコミ側からの要望を聞いていてくれたらしい。