一途な小説家の初恋独占契約

近くのコンビニで買い物を済ませ、残りの時間は、ビジネスホテルの小さなライティングデスクの前で過ごした。

……ジョーは、どうしてるだろう。

原稿から目を上げれば、思い浮かぶのはジョーのこと。

席を立つときにだけ確認するようにしていた携帯電話には、秋穂からの報告が入っていた。


――新大阪到着。
東京駅でジロジロ見られてくらいで、新幹線では大きな混乱なし。
先生は落ち着いてる。
汐璃がいなくて寂しいですねって言ったら、『既に後悔してる』ってさ。
堪え性なし!


――サイン会は先着50名のところ、1,000人以上が詰めかけたって噂。
『何人来ても、汐璃がいないんじゃ同じ』だって!
今のところ私にしか言ってないからいいものの、いつか口を滑らせるんじゃないかと心配。
この人、自分が有名人だって自覚ないの!?


――マスコミから取材攻勢。
囲み取材はNGだけど、個別取材はできるだけ受けるって、先生のご意向。
『汐璃がいないと、時間が埋まらない』んだと。
爆発しろ!


――先生の受けた取材、チェックする暇なかったんじゃない?
ネットにアップされてるもの、送っておくね。
読みなさい!


秋穂の言うとおり、部分的に聞いていた取材もあったけれど、大半は同席しないで、雑用をこなしていた。
じっくりジョーの話を聞く余裕はなかった。

「読みなさい!」と命令形なのが気になって、原稿が粗方仕上がったところで、秋穂から送られてきた記事を開いた。

インターネットサイトだけでなく、新聞やテレビなど、大半のマスコミはネットでも閲覧できる。
映像や写真で、2日ぶりのジョーを見た。

画面の中で、アナウンサーやタレントと並んでいても遜色ないどころか、そういった本職の人より堂々としている。
私の前で甘えて見せるジョゼフ・早見・オリヴェイラではなく、人気作家ジョー・ラザフォードの姿だった。

……それなのに。