一途な小説家の初恋独占契約

「でも……っ! じゃあ、契約のことは? 邦訳の出版条件に、私を翻訳者にすることと言ったというのは、本当?」
「鎌石氏から聞いたのか。……ああ、本当だ」

……ああ、本当なのだ。

ジョーが、しっかりと頷くのを確認すると、ジョーがどんな表情をしていても、どうでも良くなってしまった。

「どうして……っ! 私、同情なんてされたくない! 自分が夢を叶えたからって、こんな形で私の夢を汚されなくなかった……っ!」
「夢を勝手に諦めたのは、汐璃だろ」
「……え?」

吐き捨てるような言葉に、体が震える。

「僕を、そんな道理の通らないことをする人間だと思ったのか!?」

……どういうこと?
真偽を糾す前に、それまで黙って聞いていた直島さんが口を出す。

「お前に窪田を責める権利はないだろ。契約を取るために、窪田がお前に従っていたのを勘違いして振り回した挙句、窪田の夢まで脅しに使う気かよ」

「契約のため……?」

「そうだ。窪田は、お前に清谷出版との独占契約を結ばせるよう厳命されていた。あんたの我がままに付き合って付き人まがいのことをしていたのも、家に置いていたのも、全部仕事のためだ」

「違う。汐璃はそんなことしない」

「それを勘違いしやがって。……窪田は、ずっと俺のことが好きだったんだよ。ちょっとばかり見た目がいいからって、突然現れたお前なんかを好くわけないじゃないか」

それまで首を振りながら、直島さんの言葉を一つ一つ否定していたジョーは、カッと目を見開いた。
直島さんを睨み、そのまま私を向いた。

「……本当なのか、汐璃」
「違う! 違います、直島さん、勝手なことを言わないでください。第一、直島さんのことを好きだなんて言ったことありましたっけ!?」
「言わなくても分かる」
「それこそ勘違いですっ!」

直島さんが、何か喚いているけれど、正直気にしている暇はない。