ホテルに荷物を預け、会社へ出勤する。

騒動のことを謝罪したかったけれど、役職者は軒並み席を外していた。
営業部も、外回りしている人がほとんどだった。

最小限の仕事のチェックだけして、急いで編集部に赴く。

けれど、ジョーは清谷書房を出た後だった。
DVD販売会社が用意した会場で取材を受けているらしい。

編集部の人に場所を教えてもらい、すぐに向かうと、そこも、既にもぬけの殻だった。
取材中かと思い、控えていた連絡を取ろうとしても、ジョーに繋がらない。

もう一度、編集部に聞いてみても、ジョーの行方は分からなかった。

こんなことは初めてだ。
いつもジョーは、私と一緒にいたし、清谷書房の管轄を外れるときも、どこにいるのか明らかにしてくれていた。

他に行き先は……と考えて、ジョーの宿泊するホテルに向かった。
ここくらいしか、思い当たる場所がない。

今朝、ホテルの予約が取れたというジョーから既に、部屋の番号は聞いていた。
取材に向かう前に、チェックインを済ませておいたのだろう。

豪華なロビーに気後れしつつ、エレベーターへ向かうと、案内しているホテルの人に話しかけられた。

「ご宿泊ですか?」
「いえ、知人がここに泊まっているんですが」
「申し訳ございませんが、ご宿泊の方とご一緒でないと、宿泊フロアにはご案内できないんです。宿泊者様に直接ご連絡を取っていただくか、フロントで尋ねていただけませんでしょうか」
「分かりました」

部屋のカードがないと、エレベーターは、宿泊フロアに止まらない仕組みになっているそうだ。

ジョーに電話してみても、やっぱり出ない。
ダメ元で、フロントに聞いてみた。

「すみません、3501号室に泊まっているジョー……ジョゼフ・早見・オリヴェイラを尋ねたいんですが。清谷出版の窪田汐璃と申します」
「少々お待ちください。……お電話には、出られないようですね」
「そうですか……ありがとうございました」

ここにもいないのか……。

諦めて去ろうとする私を、ホテルの人が引き止めた。