秋穂に尋ねられるまま、私は事の顛末を話して聞かせた。
やっぱり、ジョーを男性として好きになってしまったことも。

秋穂は、聞くまでもないと言うように、自然と受け止めてくれた。

話している間に、防犯設備の設置は終わり、警備会社の人たちに確認してもらいながら、戸締りをきっちり行った。
しばらくは、巡回もお願いしてある。
これで、数日家を空けていても大丈夫だろう。

近所へは、取り急ぎ両隣のお宅に伺い、昨日の騒ぎのお詫びと、しばらく家を留守にすることを伝えた。

秋穂は、自分の家に来ても良いと言ってくれたけど、実家暮らしの上、通勤時間2時間近くかかるので遠慮した。
会社近くのビジネスホテルに予約が取れた後、ジョーからは都心の高級ホテルに部屋を取ったと連絡が入った。

この前は、全然空室がなかったのに、今日はあっけない。

もしかしたら、ジョーなら昨夜のレストランのように、あのときもホテルを取る方法があったのかもしれない。

もしそうでも、ジョーを責める気はさらさらなかった。
10年ぶりに一つ屋根の下で過ごした時間は、ジョーの新たな魅力を知らせ、私を素直にさせてくれた。

ジョーには、スイートを取ったので同室か、せめて同じホテルに泊まってほしいと言われたけど、断った。
ジョーとは、せめて夜間くらい離れた方が良いと思ったからだ。
私が何か言われるのはいいにしろ、せっかく良い注目の集まっているジョーに、余計な詮索を生む隙はいらない。

「それにしても、どうしてジョー先生の居場所が分かったのかな」
「隠してたわけじゃないから、偶然見た人がいたのかも」

ジョーが家にいることは、誰にも言っていなかった。

初日と翌日の出勤時以外、ジョーの移動はほとんどタクシーで、家の周りを歩くことはほとんどなかった。

考えづらかったけど、つけられでもしてたかと思うと、ゾッとする。
偶然見かけた人が、面白半分に情報を流したと思うのが、精神衛生上は一番マシだ。