LAST WISHI




「で、お前は何しに来たんだ?まさか幻覚見たことをわざわざ報告しにきたわけじゃないだろう?」


あ、そうだった。


危うく本題を忘れていた。


っていうか…


「先生、やっぱり信じてないじゃないですか!!」


「いや、信じてるって…」


あたしは先生を疑いの目で見ながら、持っていた袋をテーブルに乗せた。


「これは…旭山桜か。」


上から覗いただけで品種まで分かってしまうところは、さすがは生物の先生といったところか。


「枝、何本か折れてんな。あいつが持ってたのか?」


「はい…衝撃で鉢が割れてしまったので取り敢えず別なものに植え替えしたんですけど、どうしたらいいのか分からなくて…」


「春の樹で“咲くら”か…」


???


「お前、桜の語源知っているか?」


「いいえ。」


「諸説あるけど、“咲く”に“達”という意味の“ら”が加わったという説もあるんだ。昔から群れて咲く桜は、咲く花の代表だって言われてるんだよ。」


先生はポリポリと頭を掻くと、


「…実はな。春樹が事故に遭う直前、あいつから電話が掛かってきたんだ。」


「電話?」


「桜の育て方知ってるかって。」


プライベートで電話するくらい、春樹と先生は仲が良かったなんて知らなかった。


「まぁな。って答えたら、あいつ手を貸せって一方的に言いやがってー」


先生はフッと思い出し笑いしたかと思うと、寂しい表情を見せた。


「なんで、春樹があんな目に遭わなきゃならなかったんだろうな…」


・・・


一瞬の静寂に先生が泣くんじゃないかと思ったあたしは、勢いよく立ち上がった。


「先生!」


ビクッと反応した先生は、


「あたしがこの桜、責任持って育てますから、力を貸して下さい!!」


頭を下げたあたしに


「あいつの遺言だからな。」


困ったように笑った。