ぼんやりしていたところに不意に話かけられて、飛び上がるほどに驚いた。


タエが目を見開いてみた先には、背の高い爽やかな青年が立っていた。


「やめてよ小島さん、びっくりするでしょ」


タエは青年を小島さんと呼び、ホッと胸をなで下ろした。


青年はこの食堂の常連客の1人なのだ。


「ごめんごめん。そんなに驚かれるなんて思ってかなった」


小島さんはそう言い、申し訳なさそうに頭をかいた。


「でも、そんなに熱心に何を見てたの?」


「あの子たちですよ」


タエが指さす方向へ視線をやると、そこには小さな恋人たちの姿がある。