愛花ちゃんの方から話しかけてくれる日が来るなんて、思ってもいなかった。


「和斗君は優しいね」


「そ、そんなことないよ……」


和斗は照れくさくてまともに愛花ちゃんの顔を見る事もできず、帽子を持ったままうつむいた。


「謙遜しなくていいのに」


愛花ちゃんは難しい言葉を言い、クスクスと笑う。


「ほら、一緒に帽子を返しに行こう」


愛花ちゃんが和斗の手を握り、1年生へ手を振る。


泣いていた1年生の子はすっかり泣き止んで、2人を笑顔で迎えたのだった。