「なんで俺の名前知ってるんですか?」
「えっと、友達から聞きました……」
噂になって偶然知っちゃったなんて言ったら、久我くんはどんな言葉を返すんだろう。
メガネの奥の黒い瞳からは何も読み取れない。
「そう、ですか」
久我くんは周りの視線を気にしているからか、ぎこちなくなっていた。
久我くんのほっぺが赤い。
もしかして意識してくれてる……?
だとしたら、めちゃくちゃ嬉しいんだけど。
でも、それに加え、迷惑というか困惑している表情をしている。
久我くんが何考えているのか、さっぱりわからん。
「……」
「……」
沈黙がしんどい。
何か話題を出さなきゃ……!
「っ、ちょっと、場所変えましょう」
「はい…!」
久我くんが廊下の方へ向かうので、あたしもその後をついていく。
その時の周りの男子の目線が痛かった。



