あれからというもの久我くんがやけに優しくなった。
今までも優しかったけど……。
それと比にならないっていうか……。
あたしを見かけたら、必ず声をかけてくれるようになった。
今までは気づかないフリしたり、顔をしかめるのふたつしかしなかったのに。
「清家さん」
「久我くん?」
用事がない限りあたしの教室に来ない久我くん。
最近は些細なことでもあたしがいる1組にやってくることが多くなった気がする。
「ほら、こないだ言ってた本」
「わぁ! わざわざありがとう!」
友達として再びやり直して、あたし達はお互いオススメの本を貸し合うようになった。
久我くんがセレクトする本はどれも面白いのだ。
あたしが笑顔で感謝すると、久我くんもあたしと同じ表情を浮かべるんだ。
「……っ」
久我くんは最近笑うことが増えた。
メガネの奥の瞳が細くなって、優しく笑うんだ。
あたしはその度に心臓が騒ぐんだ。
鼓動が速くなるんだ。
でも、久我くんには伝わってはいけない。
だから毎回、顔に出ないように口元を抑えるんだ。



