「あ、心春ちゃん。
おかえりなさい。帰ってたのね。」

「ただいま、櫻さん。」



リビングダイニングに繋がったキッチンに立っているのは、私の母である(さくら)さん。

けれど彼女は私の本当の母ではない。
櫻さんは20の時に碧兄を産んで一人でずっと育ててきた。



私の本当のお母さんは11年前私が3歳の時の2月の雪の強い日に乳ガンで亡くなった。

当時は私もお父さんも落ち込んでいた。
あの頃のことは驚くほど鮮明に覚えている。



8年前に櫻さんとお父さんが再婚した。

お父さんは櫻さんのことを愛している。
お母さんのことも忘れていないのも事実。
これもお母さんの遺志が関わっていて櫻さんのそれを承知で一緒にいる。

そして5年前に二人の間に双子の紅蘭と星蘭が生まれた。