椿Side

私は心春の家を出て、走っていた。

生まれて17年、これまで家のことを誰にも言わず隠して生きてきた。

それがこの前の11月。
心春が倒れた時に聖也に気づかれた。
聖也のことは信用してるし、誰にも言わないでと釘を刺したから他の誰にも伝わっていない。

これ以上は誰にも知られないようにと心がけていたが、今回、心春を助けるには私の家の力を使わない手はない。

うちの家は伊集院財閥。
日本で3本の指に入る財閥。
家の力を使えば桐島による聖也の家の買収なんて簡単に止められる。

けれど問題が1つある。
それは藤乃宮財閥だ。
あの財閥は桐島との取引がある。
もし桐島の方の肩を持たれたら終わり。

けれど心春の部屋にはその藤乃宮の一人娘との写真があった。
あの子は芸能活動をしているが、同一人物だとは知られていない。

仲のいい人以外とは写真は撮らない。
しかも彼女の自撮りだったから、かなり仲がいいのは歴然。

絶対にうちの肩を持ってくれる。