「んー……ううん。ないや、別に。あ、でも。あたしたちがんばってるから、優ちゃんは安心して治療い専念していいよってだけ言っといて。じゃ、行ってきます!」

「了解。気をつけてね!」


妹に見送られ、あたしはいつも通り忙しなく家を飛び出した。



7月にもなると、朝からすでに日差しが強く、肌から水分を奪っていくようだ。


でも夏は嫌いじゃない。むしろ好き。

剣道場の臭いが尋常じゃなくなるからうんざりするけど、夏っていう季節自体は好きなんだ。


色白で体力のない智花は、まだ上旬なのにひーひー言ってるけど、わりと元気だ。

恋のチカラってやつなんだろうなと、幸せそうな妹を見ていて思う。


あれから智花は優ちゃんに手紙とともに想いを伝えて、ふたりは晴れて恋人同士になった。

面会できる日もできない日も、毎日のように病院に顔を出して、優ちゃんを誰よりそばで励ましている。

もう夜遊びすることもなくなった。


あたしもようやく優ちゃんのお見舞いに行くことが出来たけど、前と顔つきが全然ちがって驚いた。嬉しかった。

優ちゃんの笑顔がまた見れたことに、心底ほっとして泣いちゃって。しょうがないなって、ふたりに笑われてしまった。




「この前は、ひどいこと言って悪かった。本当にごめん」