山ナントカ先輩は細身でメガネをかけた、いかにも頭の良さそうな印象の人だった。

制服もきっちり着込んで、優等生という言葉がぴったりくる。学級委員とかやってそうだなと、勝手なイメージを抱いた。


かっこいい……のかな?

冷たそうだなとは思うけど、あたしにはよくわからない。

高2にもなって、初恋も未経験だからかな。


ただ、そよ風に揺れる柔らかそうな髪は、綺麗だなと思った。

あたしのよく知っている人の髪に、少し似てたから。



「あー……俺、もう行っていいの?」


山ナントカ先輩が、若干あきれたようにそう聞いてきてハッとする。


「ちょ、ちょっと待ってください! えーと、そのですね。あたしも突然のことで、こう、なんて言っていいのかわかんないんですけど……」


このまま帰られるのはまずい。

だって手紙、ここにあるし。あたしが持ってるし。


自分でも何で持ってるのか意味わかんないけど……。

加奈子に押し付けられた手紙はこんなに薄っぺらいのに、あたしの手にはひどく重く感じた。