それからどのくらいの時間、固まっていただろう。

一階の電話が鳴り出して、そんな微かにしか届かない音に肩が跳ねた。それをきっかけに、ようやく机から離れることが出来て、よろけながらベッドに腰かける。


お母さんが電話に出て話しはじめた声が遠くに聴こえる。

上半身をベッドに倒して目を覆った。


これで、良いのかな。

良いわけないのに、そんな自問自答するあたしって、どこまでも自己中だ。



「歩」


電話が終わったらしいお母さんが、ノックもなしに勝手にドアを開けて顔を出した。

文句を言う前に「ちょっと病院行ってくるから」と早口で告げられて、腹筋を使って身を起こす。

なんだかただ事じゃないような雰囲気を感じて「何かあったの?」と聞く。

嫌な予感がした。あたしの予感はけっこう当たるんだ。


「優一郎くんが倒れたって」

「……は?」


言われた意味が理解できなくて、思わずお母さんを睨んでいた。

優ちゃんが、何だって?