先輩と別れて、廊下をひとり歩く。長い窓の向こうに広がるのは、どんよりとした灰色の曇空。

あたしの心を体現したようで、見ているだけで気が滅入る。土曜からずっと、雲は晴れない。


昨日の夜、智花とケンカした。考えてみれば、家族になってからはじめての衝突かもしれない。


「今日さ、街で智花を見かけたんだけど。図書館で勉強会じゃなかったの?」


やっぱり遅く帰ってきた智花に、あたしはストレートにそう訊ねた。遠まわしに聞いてはぐらかされても、納得できないと思ったから。それにあたしは周りくどいことは苦手だ。向いてない。

お母さんは完全に良い子の智花を信用しきってるから、多少帰りが遅くなっても「こんな時間までお疲れさま」と労ったりする。

あたしが相手なら「どこ寄り道してたの! どうせ買い食いでしょ!」って決めつけてかかってくるところなのに。


これが日ごろの行いの差ってやつか、と感心している場合じゃない。あたしがしっかり怒ってやらないと。

そう思って寝る前に智花の部屋を訪ねた。そして、ぶつかった。


「……したよ、勉強。ちょっと場所が変わっただけ」

「へえ。じゃあどこでしたの?」

「ファミレスで」

「ファミレスでこんな時間まで? しかもわざわざ着替えて?」