そのなみだに、ふれさせて。




ほ、ほっぺにちゅーされたんですけど……!

まわりの女の子たちも顔赤らめちゃってるんですけど……!



「し、紫逢先輩、」



このままじゃ、注目されすぎて心臓痛いよ……!!

どうにかしてこの場から逃れたいのに、普段はわたしの心情を悟ってくれるくせに、今回に限ってぜんぜん通じていない。



「やっぱかわいい。

……ほっぺにちゅーしたぐらいじゃ足んないから、このまふたりでイチャイチャできるとこ行こうか?」



「へ、」



「誰にも、邪魔されないとこ」



ぞくり。

深くて艶をはらんだ声に、背筋が震える。




「葛西お前、」



「じゃあね、会長。

……ああ、そうそう。御陵さんだっけ。俺は2年の葛西紫逢。生徒会会計担当で、このコの彼氏だから。以後お見知りおきを」



にこり。

笑った紫逢先輩が、わたしの手を引く。



「ごめんね。瑠璃のこと借りる」



こそっと、隣にいたなるせくんにだけそう言って。

紫逢先輩は、身動きが取れなくなったみたいにわたしたちのことを見つめていたギャラリーの間をさくさくと抜けて、階段をおりる。



「紫逢先輩……っ」



あの場から助けてもらったのは、感謝してる。

だってわたし、あのままじゃあの子になんて言っていいのかもわからなかったから。……だけど。