そのなみだに、ふれさせて。




わたしのまわりの大人はみんな、器用に生きているように見える。

自分に必要なものだけを追い求めて、不必要なものは切り捨てて。



憧れだと言われればそうかもしれない。

だけどきっと、そんな綺麗な言葉じゃなかった。



「瑠璃」



夕飯を済ませ、南々ちゃんはななみとお風呂に入った。

それからわたしが言っていた通り瀬奈とお風呂に入ると、南々ちゃんが子どもたちの髪を乾かして寝る準備を済ませてから、寝かしに行く。



その間、わたしはなるせくんへようやく返事をして。

いろちゃんに電話しようかなと、ぼんやり思っていれば。



「南々ちゃん、もどってくるのはやいね」



「ふたりとも早く寝付いたのよ」




くすりと笑った彼女が、「何か飲む?」と聞いてくれる。

いつもならいっくんがいるから部屋に引き上げるところだけど、まだ彼が帰ってきていないこともあって、「うん」と返した。



「ねえ、瑠璃」



「なぁに?」



「今日、何かあったでしょう?」



……鋭い。

何かあった?じゃなくて、何かあったことを前提に聞いてくるところを見ると、きっと南々ちゃんは逃してくれない。



「……なんで、そう思ったの?」



キッチンからティーバッグとお湯の入った透明なティーポットと、カップをトレーに乗せて運んでくる彼女。

南々ちゃんがテーブルの上にそっとそれを置くと、ふわりと芳醇な紅茶の香りが漂う。