「るぅ、ちゃ、」
「え? あ、どうしたの?」
ななみにくっと服を引かれて、はっと我に返る。
大きな瞳をわたしに向けた彼女は、「おちゃ」と催促。どうやらお茶が欲しかったらしい。
「うん、いま用意するね」
なるせくんにはあとで返事しようと決めて、立ち上がる。
お茶用に使っているストローマグにお茶を入れてななみに手渡したところで、ちょうど南々ちゃんが買い物から帰宅した。
「おかえり南々ちゃん」
わたしもお手伝いするよ、と。
言えば南々ちゃんは「ありがとう」と優しく微笑んで、わたしに指示してくれる。
お手伝いしている時間は、何も考えなくて済むから好きだ。
あとは、瀬奈やななみと遊んでいるときも。
「いっくんは今日も遅いの?」
「そうね、21時は過ぎるんじゃないかしら」
「大変だね……」
色々と医療環境を改善したくてがんばってるみたいだけど、いっくんも働きすぎな気がする。
お休みの日もお仕事してたりするし、空き時間は子どもたちと遊んであげているし。
「ふふ、きっといつみは大変だなんて思ってないのよ。
誰かのために頑張れるの、好きだから」
きっといまの仕事は彼の天職ね、と。
綺麗に笑う南々ちゃんを見て、そういうものなのかと納得する。



