そのなみだに、ふれさせて。




あのあと、ちーくんは途中で帰ってしまった。

あけみ先輩と菅原先輩ももどってこなかったし、会長もずっと不在のまま。



だからカフェでの仕事の続きを、紫逢先輩とふたりで続けて。

授業時間終了の少し前にわたしも帰ってきてしまったから、明日からみんなと顔を合わせづらい。



……といっても、しばらく生徒会棟には行かないんだけど。



「ただいま」



あ、南々ちゃんたち帰ってきた。

真面目に課題をやっている瀬奈と違って手持ち無沙汰のわたしは、玄関までお出迎え。



「おかえりなさい」



靴をぬいだななみがわたしに「ただいま」を言うから、屈んで「おかえり」を返す。

そうすれば抱っこをおねだりされて、ななみの華奢な身体に腕を回して抱き上げた。




「ごめんね、いつもより仕事遅くなっちゃって。

先にななみのお迎えに行ってきたから、これから買い物行ってくるわ」



「わたし行かなくて良い?」



「車ですぐ行って帰って来るから、ななみと瀬奈の面倒見てて欲しいの。

万が一何かあったら、連絡してね」



「はぁい。いってらっしゃい」



南々ちゃんを見送るために外に出たら、呉ちゃんが自分の車の窓から手を振ってくれた。

それに手を振り返せば車は去っていって、南々ちゃんは自分用の白い車に乗り込む。



いつもお仕事のときは呉ちゃんの車に乗るけど、プライベートでは自分で運転する南々ちゃん。

いっくんも車通勤だから、珠王家には白と黒の2台の車がある。



「よし、お家入ろうか。

手洗って、ママ帰ってくるの待ってようね」