そのなみだに、ふれさせて。




「いてくれるだけで癒しだと思うよ、俺は」



「……マスコットキャラクター」



「そ、マスコットキャラクター。

そんじょそこらのなんとも反応しづらい微妙なゆるキャラより、よっぽどかわいいじゃん」



……褒めてくれてるのに素直によろこべないこの気持ちは一体なんなんだろう。

「お人形さんみたい」とは昔から何度か言われてきたし、3人いる兄たちの着せ替え人形にされた幼稚園時代もあったけど。



さすがにゆるキャラと比べられたことはない。



「マスコットキャラクターっていうより、瑠璃はフランス人形でしょ。

せっかくロリータ顔なのに、なんで髪染めちゃわないの?」



私服もかわいいの多いのに、と嘆くあけみ先輩。

出会った頃から幾度となく「髪染めれば?」と言われてきたけれど、わたしが髪を染めないのには、ちゃんと理由があった。




「ね? 会長もそう思わない?」



ピクッと、肩が揺れる。

わたしと一緒にもどってきてあけみ先輩の隣に座って以来、一度も口を開かなかった彼は。



「別に良いだろ。

むしろウチは強制してねえだけで、普通の学校ならカラーは校則違反だからな」



なんてことないように、告げる。

……それが、ひどくうれしかった。



わたしが、髪を染めない理由のひとつは。



「あけみ、会長に聞いてもだめだって。

髪色がパープルブラックのお前とか俺と違って、会長黒髪じゃん」



この学校で数少ない黒髪。

そのひとり、会長と。……おそろい、だからだ。